固定残業代の「3点セット」の読み方
「月給28万円(固定残業代を含む)」のような求人を見かけたことはないでしょうか。固定残業代(みなし残業代)は、一定時間分の残業代をあらかじめ毎月の給与に含めて支払う仕組みです。介護職の求人ではシフト制が多いため比較的少数ですが、管理者やサービス提供責任者などの求人で見かけることがあります。この記事では、固定残業代が含まれる求人で確認したい「3点」を説明します。
求人票に書かれるべき3点
職業安定法に基づく指針(平成11年労働省告示第141号)は、固定残業代を採用する場合に、求人票に次の3点をすべて書くよう求めています。
- 固定残業代の計算方法:何時間分の残業に相当するか(時間数)と、その金額
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業時間を超えた分の割増賃金を、追加で支払うこと
たとえば次のような書き方であれば、3点がそろっています。
基本給 170,000円/固定残業手当 60,000円(30時間分)。30時間を超える時間外労働分は別途支給。
なぜ3点が必要なのか
固定残業代が月給に含まれていると、月給の額だけでは「基本給がいくらで、何時間分の残業代が含まれているのか」が分かりません。上の例では、月給は23万円ですが、基本給は17万円です。残業代や賞与の計算の基礎が基本給になる場合、この差は収入に影響します。
また、固定残業代は「何時間残業しても定額」という仕組みではありません。労働基準法37条により、時間外労働には割増賃金の支払いが必要で、あらかじめ決めた時間を超えて働いた分は追加で支払われる必要があります。3点目の「超過分の追加支給」が明記されているかは、この点の確認になります。
求人票を読むときのポイント
- 「固定残業代なし」と明記されていれば、この項目の確認は済みです。ハローワークの求人票には「固定残業代(c)」という欄があり、「なし」と書かれていることが多いです。
- 「みなし残業含む」「残業代込み」のように、時間数や金額が書かれていない場合は、面接で「何時間分・いくらか」「超えた分はどう支払われるか」を確認しておくと安心です。
- 「残業ほぼなし」と書かれている求人に固定残業代が含まれている場合は、実際の残業時間の目安も合わせて聞いてみてください。
よくある書き方と読み方
実際の求人票では、次のような書き方が見られます。
- 「月給25万円(固定残業代30時間分 5万円を含む。超過分は別途支給)」:時間数・金額・超過分の支給は書かれていますが、固定残業代を除いた基本給の額は書かれていません。この場合、25万円から5万円を引いた20万円が基本給以外の手当も含めた額なのか、基本給そのものなのかを確認するとよいでしょう。
- 「月給25万円(みなし残業含む)」:時間数も金額も分かりません。何時間分でいくらなのかを確認する必要があります。
- 「月給25万円〜」とだけ書かれ、別の欄に「固定残業手当あり」:金額の内訳が分からないため、給与明細のイメージを聞いてみると具体的に分かります。
時間数が分かれば、「固定残業代÷時間数」で1時間あたりの残業代の目安を計算できます。これが、基本給から計算される1時間あたりの賃金に割増率をかけた額と比べてどうかも、確認の手がかりになります。
固定残業代そのものは禁止されていない
固定残業代の仕組みそのものは、要件を満たせば採用することができます。大切なのは、求人票に3点が明示されていて、応募する人が内容を理解したうえで判断できることです。
本サイトの確認ツールでは、固定残業代について「なし」の明記または3点の記載が読み取れるかを表示します。「指針で明示が求められています」と表示される項目は、法律・省令ではなく指針に根拠がある項目です。
出典
- 厚生労働省 リーフレット(固定残業代を含む場合の明示について): https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000184068.pdf
- 厚生労働省「平成29年職業安定法の改正について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172497.html
- 労働基準法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049